大判例

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福岡地方裁判所 平成10年(わ)278号

主文

被告人を懲役一年及び罰金三二〇〇万円に処する。

罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間懲役刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実の要旨)

被告人は、福岡市早良区西新二丁目一二番二一号に居住していた夫吉村欽二の死亡により同人の財産を他の相続人とともに共同相続したものであるが、相続税を免れようと企て、相続財産の一部である割引債券を除外して課税価格を減少させる方法により、右吉村欽二の死亡により同人の財産を相続した相続人全員の正規の相続税課税価格が二四億九、九九六万三、〇〇〇円で、自己の正規の相続税課税価格は一一億七、八二二万二、〇〇〇円であったにもかかわらず、平成八年一一月五日、福岡市早良区百道一丁目五番二二号所在の所轄西福岡税務署において、同税務署長に対し、相続人全員の相続税課税価格が一八億三、四四二万円であり、自己の相続税課税価格は八億四、六六一万一、〇〇〇円で、これに対する自己の相続税額は零円である旨の虚偽の相続税申告書を提出し、もって不正の行為により、正規の自己の相続税額一億三、五二七万一、二〇〇円を免れたものである。

(適用した罰条)

被告人の行為(亡夫の吉村欽二からの遺産相続に伴う相続税申告に当たり、相続財産の一部である割引債券を除外して相続税申告書を提出し、不正の行為により、自己に対する相続税一億三五二七万一二〇〇円を免れた行為)は、相続税法六八条一項に該当するところ、情状により所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し、なお、罰金刑については、情状により相続税法六八条二項を適用し、免れた相続税額に相当する金額以下で処断すべきところ、被告人を懲役一年及び罰金三二〇〇万円に処し罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、本件犯行内容に照らすと、被告人の刑事責任は軽くないが、被告人は本件に対し反省の情を示していること、本件犯行の動機は、亡吉村欽二の子らの病院経営や生活費等に当てる資金捻出のためであり、利己的な要素はなかったこと、本件発覚後、被告人は問題の割引債券については相続せず、これについてはすべて亡吉村欽二の子らが相続することで遺産分割協議が成立し、亡吉村欽二の子らは、本件起訴前の平成九年五月七日に、本税三億一二四三万三二〇〇円、延滞税一一四三万四四〇〇円の合計三億二三八六万七六〇〇円を、さらに平成九年六月二四日、本税八九五万六四〇〇円、延滞税四一万一八〇〇円の合計九三六万八二〇〇円を、それぞれ修正申告の上、納付しており、また、平成九年一二月三日、過少申告加算税三九六一万二〇〇〇円を納付していること、被告人には前科がないこと、被告人は七一才と高齢であること、などの情状を考慮すると、被告人については、社会内における更生を期待することが十分に可能かつ相当であるから、刑法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間刑の執行を猶予することとする。

平成一〇年九月三日

裁判所書記官 猿渡恵子

(裁判官 若宮利信)

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